交通事故における被害者と加害者の決め方と交渉方法について

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交通事故が発生すれば、物的・人的損害のいずれであっても、多くの場合被害者と加害者に分けられることになるでしょう。加害者は被害者に対してどのような責任を負い、被害者は加害者に対してどんな請求ができるのでしょうか?事故後は両者が示談などの交渉を行わなければなりません。

本人以外の第三者に交渉の代理を依頼することは可能なのかといった点についても解説します。

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交通事故の被害者と加害者は明確に決められるか?

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交通事故で衝突した際に、破損した自動車の所有者や、死傷した運転者や歩行者などは、被害者となるでしょう。しかしながら、一方当事者だけが被害者となり、もう一方が必然的に加害者になるとは限りません。両者とも物的・人的損害を被ったら、どちらも被害者として相手に賠償を請求したり刑事責任を追及したりできる立場に立てます。

この場合、両者とも被害者となって相手に加害者責任を追及できるのです。したがって、一方が被害者となったことを主張したからと言って、相手方が必ず加害者として認定される訳ではありません。

民事の場合、交通事故で生じる責任は、過失割合によって決められます。過失割合とは、事故の原因となる行為について過失の大きさを比較し、過失の程度に応じて賠償責任を負うというものです。ほとんどの交通事故の場合、どちらか一方だけに過失があり、もう一方には過失が全くないというケースは少ないと言っても過言ではないでしょう。

当事者の双方が被害者と加害者を兼ね、過失割合の小さい方が便宜的に被害者として扱われることが多いのです。

加害者が被害者に対して負う責任

交通事故で相手を死傷させた場合には、加害者が刑事責任と民事責任という2つの法的責任を負うことになります。

運転者の刑事責任については、自動車運転過失致死傷罪や危険運転致死傷罪が適用されます。自動車運転過失致死傷罪は、懲役7年以下または罰金100万円以下という刑が科されます。

極端な速度超過のほか飲酒や薬物使用などの原因による危険運転致死傷罪はこれよりも重く、懲役15年以下となっています。なお、過失により相手の自動車や携行品を損壊したとしても、器物損壊罪は適用されません。器物損壊罪は故意に基づくことが前提であり、過失による損壊は罰せられないのです。

また、加害者は被害者が被った損害に対して民事上の損害賠償責任を負わなければなりません。この損害賠償責任は、民法709条の不法行為に基づくもので、故意だけでなく過失による損害についても加害者は民事責任を負います。

被害者が加害者に対してできること

被害者は、加害者の刑事責任を問うため、刑事裁判を起こすことができます。起訴状が受理されれば、裁判に移行するのです。被害者は法廷で直接加害者責任を追及することはできませんが、場合によっては参考人として証言することも可能です。

また、損害賠償請求権を行使するため、民事上の責任を追及することもできます。この場合、必ず民事裁判を起こさなければならないわけではありません。加害者側と裁判外で示談交渉して、賠償させることもできます。示談交渉は、代理人を立てる必要がなく、被害者本人が直接行うことも少なくありません。請求内容は、物的損害の場合は修理費や交換費用で、心身の被害の場合には治療費・入院費・通院費のほか、精神的苦痛に対する慰謝料なども含まれます。被害者が死亡した場合には、遺族が故人の損害賠償請求権を相続して請求することも、問題ありません

自動車の運転者が加害者だった場合、任意保険の会社に交渉を依頼できる

交通事故の加害者となった場合には、相手に対して損害賠償責任を負うため、対人・対物賠償が可能な任意保険に加入していれば、保険会社の担当者に示談交渉の代行を依頼できます。ただし、自分に過失がなく、完全な被害者となった場合には、相手に対して損害賠償責任を負わないので、保険会社に示談交渉の代行を依頼できません。

保険会社は、あくまでも相手に与えた損害を賠償する場面に限り、代行できるのです。したがって、無過失の被害者本人は、第三者に代理を依頼しない限り、加害者が加入する保険会社の担当者と直接示談交渉することになるでしょう。

民事責任を追及する場合、刑事事件と異なり本人が直接示談交渉できるとはいえ、相手が保険会社の担当者という交渉のプロを代理人として立ててきた場合には、交渉の素人である被害者にとって極めて不利な展開になることは否定できません。

相手側の保険会社は、賠償額をできるだけ減らそうと画策してくるでしょう。賠償金に関する保険会社の基準は、裁判基準に比べて極めて低額だと言われています。

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被害者が弁護士に依頼した方が良い理由

このように、無過失の被害者が保険会社に代行を依頼できない場合には、弁護士に代理を依頼することが望ましいでしょう。紛争解決の代理権を持つ弁護士と交通事故の交渉代行権限を持つ保険会社以外の第三者に代行を求めることは、非弁活動を禁じる弁護士法に違反するからです。

弁護士は紛争処理や交渉の専門家なので、示談交渉を有利に進めることができます。一般的に、弁護士基準の賠償額は、保険会社が提示する金額より高額になります。特に、交通事故を専門とする弁護士は、賠償請求のコツを心得ていると言っても過言ではないでしょう。

また、弁護士に依頼すれば、本人が加害者と顔を合わせる必要がなく、被害者の心理的負担を大幅に軽減できます。被害者になると、損害が大きいほどトラウマとなりやすく、事故を思い出すだけでもストレスが高まってしまうケースも少なくありません。

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任意保険に加入する際には、弁護士費用特約を付帯しよう!

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ただし、保険会社に依頼する場合と異なり、弁護士に依頼するには高額の依頼料を支払わなければなりません。示談交渉を有利に進めて求める賠償金を得られたとしても、弁護士に支払う費用によりかなり減額されてしまうこともあるでしょう。

そこで、自動車の所有者は、任意保険に加入する際に、弁護士費用特約を付帯することが欠かせません。

弁護士費用特約と付帯しておけば、示談交渉の際にかかる弁護士費用を保険会社が負担してくれます。費用の上限は300万円ほどに設定されている商品も多いですが、交通事故の交渉に長けた弁護士を紹介してくれる保険もあるので、活用しましょう。

弁護士費用特約を付帯し、交通事故に遭ったら保険会社に相談しよう!

交通事故を起こしてしまったら、まず被害者を救護しなければなりません。救急車が来て救護を任せた後、保険会社に電話して対応につき相談しましょう。逆に、一方的な被害者となった場合には、保険会社に示談交渉の代行を依頼できないので、任意保険に加入する際には、あらかじめ弁護士費用特約を付帯しておくことが欠かせません。