交通事故の被害者が認知症だった場合の問題について

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交通事故はいつどのような人が加害者または被害者になるかわからないため、様々なケースを想定しておかなければいけません。

特に高齢者に関連した交通事故は注意が必要で、加害者や被害者が認知症だったことでトラブルに発展しているケースもあるのです。

そこで今回は、交通事故が発生した際、被害者が認知症だった場合の問題について解説します。

認知症の高齢者は交通事故で加害者だけではなく被害者にもなりうる

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認知症の高齢者が関連する交通事故と聞くと、一般的に認知症の高齢ドライバーが引き起こしたものを連想する人が多いです。高齢ドライバーによる交通事故が増えている中、認知症による交通事故も徐々に増えてきていることが理由として考えられています。

ただ実際には認知症の高齢者は交通事故では加害者となるだけではなく、被害者となるケースも非常に多く見受けられます。そもそも認知症は判断能力や認識に関する能力がかなり低下していることが多いとされていて、周囲の危険を察知することができない人も少なくありません。

このため自動車が近づいていても危険だと判断できず、自分からぶつかるような形で交通事故に巻き込まれる人も多いです。さらに認知症の高齢者は家や施設から抜け出して徘徊することがあり、その途中で交通事故に巻き込まれて被害者になってしまうことも珍しくありません。

このような点から認知症の高齢者は自動車を運転していなくても思わぬ行動をしてしまうことがあるため、加害者だけではなく被害者になってしまう可能性が高いと言われています。そのため運転をする人はもちろん認知症の高齢者を介護する人も、認知症による交通事故に注意しなければいけません。

交通事故で認知症の高齢者が被害者になってしまった場合の問題点

もし交通事故で健康な高齢者ではなく認知症の高齢者が被害者になってしまった場合、とある問題が発生します。それは交通事故に関する正しい証言をしてもらえない、交通事故に関する記憶を忘れてしまう可能性があるという点です。

認知症の症状の度合いによって若干異なる部分はあるものの、認知症の高齢者は何らかのトラブルに巻き込まれてしまってもその内容について正確に答えられない可能性が高いとされています。そのため加害者が交通事故に関する詳細を説明したとしても被害者側の証言が取れないので、一方的な内容として信用してもらえない可能性があるのです。

相手がすでに認知症であることが判明していれば信用してもらえる可能性が高いものの、高齢者自身がまだ認知症と診断されていなかった場合、加害者の立場が悪くなってしまうことも考えられます。さらに時間が経過して交通事故の被害者になってしまったことそのものを忘れてしまう可能性があるので、より交通事故の全容を把握することができなくなってしまうなどの問題が挙げられています。

被害者である認知症の高齢者の家族側にも問題が出てくる

認知症の高齢者が交通事故の被害者になってしまった場合、加害者は交通事故に関する証言を取ることができなくなるという問題が発生しますが、高齢者の家族側も同じような問題が発生します。ただ家族側は単純に交通事故に関しての全容を知ることが難しくなるだけではなく、加害者側に嘘をつかれて慰謝料などを減額されてしまう可能性もあるのです。

認知症である高齢者からの証言が正しく取れない場合、交通事故の全容を知るためには実況見分と加害者側の証言が頼りになってきます。その際に加害者が自分の過失を隠すために嘘の証言をしたとしても、実況見分の結果と異なっていなければ認められてしまう可能性が出てきます。

例えば認知症の高齢者がただ歩いていただけなのに、突然飛び出してきたから轢いてしまったと証言されることもあるのです。もちろん嘘だと判断されれば問題はありませんが、目撃者がいなかったり実況見分でも異なっていないと判断されてしまうと、被害者側がそれを覆すことはできなくなります。

そうなってしまうと加害者側の過失が認められなくなってしまうので、請求できる慰謝料にも影響が出てくると考えられます。

交通事故を起こしてしまった加害者側の責任はどうなるのか

ここで気になるのが、認知症の高齢者を交通事故の被害者にしてしまった加害者側が負う責任です。一般的に交通事故の加害者になった場合は、刑事責任と民事責任の2つを負うことになります。

刑事責任は加害者側に過失があったかどうかが問題点とされており、交通事故が発生した際に加害者側がそれを回避できたかどうかが論点になることが多いです。認知症の高齢者が被害者となった際には、突然飛び出してきたなど不合理な行動が原因になっていなかったかどうかで過失があったかどうかが判断されます。

そのため認知症の高齢者が予測できない行動をしたことが原因だと判明したら、加害者側は刑事責任を回避することができるのです。そして民事責任に関しては、加害者側が注意を怠っていなかったことが証明されればこちらも免責される可能性があります。

これは免責3要件と呼ばれるものを立証できるかどうかが論点となっており、立証できなかった場合は損害賠償を支払わなければいけません。ただ免責されなかったとしても被害者である認知症の高齢者側にも過失があったと判断されることが多いため、ある程度減額されるケースが多いようです。

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交通事故の後に被害者が認知症になるケースも

交通事故が発生した際に被害者の高齢者が認知症であったケース以外にも、交通事故が原因で被害者の高齢者が認知症になってしまうというケースもあります。これは交通事故による怪我などが理由で長期入院を余儀なくされてしまった場合に多く見受けられ、交通事故とは直接因果関係はないとしつつも、交通事故による怪我や障害が理由の長期入院が原因で認知症になったと裁判所で認められた事例もあります。

このような場合、加害者は交通事故による慰謝料や損害賠償を支払うだけではなく、認知症を発症させてしまったことに対する損害賠償も請求されてしまう可能性があるのです。もちろん全ての交通事故で因果関係が認められるわけではないものの、高齢者が被害者となった際にはこのような問題が起きる可能性がある点も理解しておかなければいけません。

認知症の高齢者が交通事故の被害者になるとトラブルが多い

このように認知症の高齢者が交通事故の被害者になってしまうと、交通事故の全容を把握するまでに時間がかかってしまうだけではなく、加害者が嘘をつくことができるなど様々なトラブルが起きてしまう可能性があります。

ただ交通事故の責任は加害者側が全て負うわけではなく、被害者側にも過失があったと判断される点は理解しておくことが大切です。

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